***世界で一番キミの味方・・・***森には、豊かに流れる川があり、たくさんの木の実を実らせる木々がありました。そのクマは、もうどれくらいそこに住んでいたのでしょう。 自分でも忘れてしまうくらい。 けれど、その森にいつも抱きしめられ、森が自分を育ててくれたという気持ちは、心の中にいつもありました。 しかしこの森にも、人間たちの開発とやらの追い風が吹き、もってあと数年・・・そんな噂は、クマの耳にも入りました。 新しい森を探して出ていくものもいました。 そのことで森の生態系は狂い、更に森の寿命を縮めてしまうことになっても。 みな、やはり自分が大事だから。 自分を大事にしなければいけないから。 生きるために、それは誰も責めることは出来ないことです。 クマはそれでも、その森を出て行くことはしませんでした。 仲間がだんだんに離れて行き、幾つもの別れがありました。 それでも、クマにはそこを離れる気はありませんでした。 その夜、クマは川辺に寝ころび、星を眺めていました。 ふと、声がしました。 「クマさん、こんばんわ」 見ると、一羽のコトリがこちらを見ていました。 「こんばんわ」 「星を見てるの?」 「あぁ。キミは、どこから来たんだい?もうこの森にいた鳥たちは、みんな何処かへ飛び去ってしまったはずだよ。」 「クマさんのことを聞いて、会いに来たの。」 「ボクのこと?あぁ、大方、変わり者のクマだとでも誰かが話してるんだろ?」 「そんな感じに話す人もいるのかなぁ。 でも、私はただ、なんとなくクマさんに会ってみたくなって。」 「キミも変わりものだね。」 クマは笑いました。 コトリも笑いました。 「ボクはね、この森が好きなんだよ。 ただそれだけ。」 「それは、見ていてわかる!だから、森の為にここに残ってるの?」 「いや、そうじゃないよ。 ボクがここに残るのは、ボク自身のため。 森の為だなんて、ボクには何も出来ないよ。 森は、こんなボクが何をしたからって、どこにいたからって、それで変わったりするほどちっぽけじゃない。 ボクは、ボクが生きたいように生きてるだけだよ。」 クマは優しく微笑みました。 「なんとなくわかる・・・」 コトリは頷きました。 「愛してる気持ちは、一瞬一瞬の感情。 クマさんは、自分の気持ちに素直に、愛してるもののそばにいるだけ。 それが、たまたま長い時間に重なっていっただけ。 そんな感じ・・・でしょ?」 「難しいこと言うなぁ。 そんなたいそうな事じゃないけど。 ま、そうだね。 ボクはいつでも自分勝手だからね。 自分がしたいように生きてるだけ。」 クマとコトリは微笑みながら星を見上げました。 「ホントはね、クマさんは寂しくなっていないかなって、少し心配だった。 でも、なんだか安心した。 クマさんの愛情が、いつも他の誰かの気持ちを暖かくして、その暖かさがクマさんの気持ちを暖かくして・・・ なんていうのかなぁ。 先は分からないけど、クマさんはきっと幸せになれる。 そんな気がした。 あ、ごめんね。 今も幸せだよね。 ずっと幸せでいられる。 そんな気がした。」 「あはは。 そうだね。 幸せは、幸せのところに集まるものだからね。」 星がキラキラ綺麗な夜でした。 ジャンル別一覧
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